こんにちは、ゆんつです。
皆さんは自分の両親の「なれそめ」を知っていますか?
僕も兄も両親のなれそめを知っています。
別に僕たちから聞いたわけではありません。
僕が小学校6年生だったある日、父が自ら話し始めたのです。
その日の父は何か良いことがあったのか、夕食時に普段飲まないお酒を飲んで上機嫌でした。
夕食が終わった後も父は食卓で余ったおかずをつまみにチビチビとビールを飲んでいました。
僕と兄は父の側で食後のデザートを食べていました。
片づけを終えた母は、少し離れたところにあるリビングで横になってテレビを見て笑っていました。
すると突然、父がゆっくり僕たち兄弟に母との馴れ初めを話し始めたのです。
父と母の馴れ初め
父と母は職場恋愛でした。
父が勤めていた会社に、母が事務員として入社します。
父は母に一目ぼれをします。
その日から猛アタックをしますが、なかなか相手にしてもらえません。
デートに誘っても「家が厳しいからダメ」といって断られてしまいます。
それでも父はくじけずに誘い続け、なんとかデートにこぎつけます。
最初のデートはデパートで母親に靴をプレゼントし、レストランで食事をして別れたそうです。
その後も休みの度にデートに誘い、いつしか2人は付き合うようになっていました。
母の家は厳しく、門限が19時だったので父はその時間に遅れないように送り届けていたそうです。
2人とも結婚を前提とした付き合いだったので、父は付き合って半年目に母の実家に挨拶に行き「結婚を前提に付き合っている」ということを報告したそうです。
母の両親も父を気に入り、それからは門限も無くなったようですが、それでも父はきちんと門限に間に合うように母を帰らせていたそうです。
付き合いだして1年がたったころ。
父と母は1泊2日の旅行に行くことになりました。
これまでいつも19時には家に送っていたので、これが2人での初めての外泊ということになります。
1日目の観光を終え、ホテルに到着してのんびりしていると母は「ジュース買ってくる」といって部屋を出ていきました。
部屋にもどってきた母が「はい」と言いながら差し出した手を見ると、父の好きなコーラ握られていました。
父は「ありがとう」といって受け取り、ゴクゴク飲んだそうです。
それから2時間もするとまた母は「ジュース買いに行ってくるね」と言って部屋を出ていきました。
戻ってくると手にはまた「コーラ」。
父は「もうコーラはいいんだけどなぁ」と内心思いつつ、母の気遣いを無駄にしたくなくてゴクゴク飲み干したそうです。
この後も母の数時間おきにコーラを買ってくる行動は続き、父はホテルのチェックアウトまでに7本のコーラを飲んでお腹がチャプチャプだったそうです。
ホテルをチェックアウトして、その日の観光地に行く時に父はあることに気づきました。
それは母がホテルで部屋のトイレに1度も行っていないということです。
そうです。
母は部屋のトイレを使うのが恥ずかしかったので、ジュースを買いに行くと言って部屋を出て、わざわざロビーのトイレを使い部屋に戻る時にコーラを買っていたのです。
母のその行動に、父はそれまでの人生で一番と言っていいくらいの感動をしたそうです。
「なんて奥ゆかしい人なんだ!絶対にこの人しかいない!!!」
父はもう少し付き合ってからプロポーズする予定だったのですが、その日に突然プロポーズ。
母もそれを受け入れ、そして結婚。
僕たち兄弟を授かります。
時は流れて
なれそめを話し終わった父が、リビングで横になってテレビを見ている母の後ろ姿を見ながら言いました。
「お母さんにもそんな時期があったんだぞ。信じられないだろ?」と。
確かに信じられませんでした。
僕たちの知る母は、トイレに入ればまるでナイアガラの滝がすぐそばにあると錯覚させるかのような轟音を響かせ、家の中にいるときはあたりかまわず屁をこく人だったからです。
実際にその時も母は横になってバラエティー番組を見ながら「ギャハハハハハ!」と大爆笑し、大爆笑のはずみで「ブッ」と屁をこいていました。
コップに残っていたビールを飲み干し、グラスを静かに食卓において父が言いました。
「もし俺にドラえもんがいたら・・・
角材をもってタイムマシーンに乗ってプロポーズの直前まで遡る。
そしてプロポーズをしようとしている自分に、
「俺は未来のお前だ。いいか、よく聞け。お前は騙されてるんだ。あの女は芝居をしてるんだ。冷静になれ。」と伝える。
もしそれでもプロポーズをすると言うなら、持って行った角材で過去の自分をボコボコにする」
と。
それでは、またー。
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