こんにちは、ゆんつです。
今から30年以上前の僕が小学生の頃の話です。
その頃、お盆になると必ず行われる行事がありました。
その行事とは、父の故郷で親戚や父の幼馴染の人達と舟に乗って無人島に行き、男だけで1泊2日のキャンプを行うというものです。
父はこのイベントを毎年とても楽しみにしており、その年もお盆直前にキャンプで着用する新しいアロハシャツやちょっと高価なサングラスを購入し準備万端の体制を整えていました。
出発日当日。
海は少し波が高かったですが時化というほどではなく、参加者は2隻の船に分乗して無人島を目指しました。
大人も子供も皆この日を楽しみにしていたのでテンションが高く、船の上はとても賑やか。
父も買ったばかりのアロハシャツとサングラスを身に着け、幼馴染や親せきの人たちと談笑していました。
舟が港から出て3分くらい経った頃だったと思います。
突然、僕たちの体が宙に浮きました。
えっ?
と思ったその瞬間。
僕が乗っていた船の乗員は全員海に投げ出されていました。
なんと、船が横波をうけて転覆してしまったのです!
立ち泳ぎをしながら状況を確認してみると、大人は船に近いところに放り出されていましたが、僕と兄は子供で体重が軽かったせいなのか、船から少し離れた場所に放り出されていました。
もう1隻の船は転覆しなかったので、すぐに海に落ちた人たちの救助を始めました。
また、近くで漁をしていた知り合いの漁師さんも船の転覆に気づき、こちらに救助に向かってきました。
お父さんが助けに来た!
大人はあまり遠くに投げ出されなかったため、すぐに全員が船に引き上げられました。
舟から少し離れたところに放り出された僕と兄は、平泳ぎをしながらゆっくりと船を目指して泳ぎ始めました。
舟の上を見ると、父が心配そうにこちらを見ています。
父は平泳ぎで船に向かっている僕たちに
大丈夫かー?
と声をかけてきました。
兄と僕は平泳ぎをしながら
だいじょうぶー!
と答えました。
すると次の瞬間。
父は船の上から僕たちがいる方に向かって海に飛び込みました!
僕も兄も
お父さんが助けにきてくれる!
そう思いました。
あと少し泳げば船にたどりつくので、正直いうと父の助けは不要でしたが、それでも父が僕たちを助けに海に飛び込んでくれたことに嬉しさを感じました。
あら?
僕たちのいる方に向かって海に飛び込んだ父。
でも、おかしなことに、僕や兄の前に姿を現しません。
僕と兄が船にたどりつき船べりをつかんで海面を眺めていると、父が海面に顔を出しました。
そして、チラッと僕たちの方を見ると、再び海に潜っていきました。
舟に引き上げてもらった僕と兄は海面を見つめ続けます。
少しするとまた父が海面に浮かんできました。
海面からガバっと顔を出した父は、右手を突き上げて大声で
あったぞー!
と叫びました。
突き上げた右手にはサングラスが握られていました。
どうやら、父は僕と兄を助けるために海に飛び込んだのではなく、転覆の衝撃で海に落とした買いたてのサングラスを拾うために飛び込んだようです!
・・・
・・・
僕と兄だけでなく、他の人たちも僕と兄を助けに飛び込んだと思っていたので、右手にサングラスをもって「あったぞー!」と絶叫する父に、全員が
そっちかい!
とツッコんでいました。
その後
舟は転覆してしまいましたが、幸いにも誰も怪我をしたりすることなく、全員無事に港に戻ることができました。
結局、その年のキャンプは中止となり、無人島でやるはずだったバーベキューは父の実家で行われることになりました。
そのバーベキューの席上。
父の幼馴染が、このたびのサングラスの一件について、参加していなかった僕の母や祖父母、その他の参加者の家族などに面白おかしく話しました。
話を聞いた人たちは笑っていましたが、母だけは怒って
子供よりサングラスが大事か!
と父を責めていました。
父は
いや、子供が安全なことが確認できたから、サングラスを拾いに潜ったんだよ
と弁明していましたが、母の怒りはなかなかとけることはありませんでした。
ちなみに、父が海に潜って救出したサングラスですが、翌日、胸ポケットに入れた状態で洗車していたところ地面に落としてしまい、その落としたサングラスに気づかず車を動かしたところ、タイヤでひいてしまいグチャグチャに壊れて使い物にならなくなりました。
グチャグチャになったサングラスを見た母は
やっぱり、神様っているのねー
と言っていました。
毎年お盆になると、このエピソードを思い出します。
それでは、またー。
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